“ 涙の訳 ”

人は“深さ”に愛を知る。 そう思っていたし、今でも正しいと思ってもいる。 約12年間、育ててくれた祖母。 最後の別れは寂しかった。 僕はその時涙していた。 悲しかったから。 昨日の事について話したかったし、 今日の事も、明日の事も、 夕飯についても話…

「メロディー」

彼女の脳内にはピアノのメロディーが流れる。 彼が後ろにいることにトキメキを覚え始めていた。 彼の匂い、腕の温もり、呼吸をする音、 彼女の後ろから感じるものがある。 相性は最悪だと思っていた。 足で漕ぐボートではお互いのリズムが合うことがなく、公…

”夜のバス”

妄想と理想の違い。 過去と思い出の違い。 理由と原因の違い。 現実と今の違い。 好きと嫌いの違い。 愛と恋の違い。 僕は彼女の隣に座っている。バスの中で。 僕が眠る前に彼女が先に眠った。 すぐに僕も目を閉じた。 次に目を開けた時、時間は1時間経って…

「似合う男」

お前は黒の服がお似合いだよ。 正しい着飾り方も知らないで、 光が輝く場所だとも知らないで、 夜の道をウイスキーで満たすままでいる。 生まれる前から存在するこの道や建物と自分の生きてきた時間を比べて僕は自分の愚かさを感じている。 僕に何が足りない…

「瞳の奥にあるもの」

海の高鳴りを感じて、君は静かさを求めている。 そこには泣きわめく子供も人の足音も聞こえない。 まるでパレードを嫌がるかのように、ヨットはただ揺れていた。 窓の外に何があるのか知りたい気持ちが僕はある。 君の温もりを知りたいし、胸の鼓動も感じた…

「隣り」

誰かとの温もりを感じる時、心臓の鼓動は時間と同じように時を刻むのかと錯覚する。 そして無限に広がる草原が有限なソファーの広さに叶わないと知る。 君が眠りについてしまうと共に朝を迎えられるのか不安を感じる。 未来を想像できる相手が運命だと思って…

「僕のお話」

君宛に書く手紙は誰も興味はない。 君も知らないお話かもしれないし、どんなに良い話でもそれはただの紙っぺらとおんなじだ。 同じ手紙を有名人が書いたとしたら、 砂漠のど真ん中に埋まっていたら、 ピラミッドの壁画に刻まれていたら、 世界はきっと騒ぎ立…

2分の現実

自殺の準備は出来た。 15:30 僕はここから居なくなる。 因みに意味は“死ぬ”って事ね。 何で“死ぬ”のかっていうと、深い意味はない。 ただ思想的なものが僕にそう選択させた。 今、右手の腕時計は15時28分をむかえた。 また1秒2秒と針を進める。 腕時計を見つ…

「“ fiction ”」

「本当の自分なんてないんだよ。」よくみんなに言われるけど、確かにそうだ。でも自分を持つ時も大事な時はあるし、周囲からの声を受け流す自分を持つ事も大切だと僕は思うんだ。そして本当の自分を持たない人はそう言う自分を持っている事になる。 そうなる…