2分の現実

 

自殺の準備は出来た。

15:30 僕はここから居なくなる。

因みに意味は“死ぬ”って事ね。

何で“死ぬ”のかっていうと、深い意味はない。

ただ思想的なものが僕にそう選択させた。

今、右手の腕時計は15時28分をむかえた。

また1秒2秒と針を進める。

 

腕時計を見つめながら僕はつぶやいていた。

「懐かしい」と。

これは15歳の誕生日に買ってもらった時計で、3時間も時計屋でじっくり選んだものだ。

当時の僕はとてもシャイで本当は違うものが欲しかったかもしれない。

 家族に恵まれていた。父、母、叔母、姉、みんな元気に生きてる。そして世間一般的に見て裕福な家庭だ。みんな優しいし、友達もいる。

学業も問題なし。いじめも受けてない。

とてもとても恵まれた人生だ。

みんなには感謝してる。でも、

僕は死を選ぶ。

それは“平等”について考えたからだ。

 僕の人生とは正反対の人もいる。恵まれない人もいる。戦争に行く人もいる。生き抜く人も、別れを告げる人もいる。飢えを覚える赤ん坊も、コーラの旨さに感動する若者も、高級ワインを飲む人も。恋をする人も、恋をしない人も。

愛を探している人も。全て、平等じゃない。 

でも何も出来ない。

僕にも限りがあるし、それは無限に挑む事と同じだ。 でも僕が“死“を選べば、この世の全ての出来事の“償い”になると考えた。

ここは夢の憧れ“アルバート”。

天候は雨が多いけど、今日はなんとか曇りで持ち堪えてる。鳥も気持ちよさそうだ。今にも滑り落ちそうなセンタータワーの屋上で僕は足を震わせていた。

針はやがて15:30を迎える。