「メロディー」

彼女の脳内にはピアノのメロディーが流れる。

彼が後ろにいることにトキメキを覚え始めていた。

彼の匂い、腕の温もり、呼吸をする音、

彼女の後ろから感じるものがある。

相性は最悪だと思っていた。

足で漕ぐボートではお互いのリズムが合うことがなく、公園で写真を撮る時には噴水が彼女を濡らしているのに。

朝はパン派の彼氏。コーヒーを飲むだけの彼女。

麺は固めと普通。

ホラーが好きな彼氏。ロマンスが好きな彼女。

 

トキメキを感じる今、愛は優しさに触れていた。

 

長い時間、湖に放流してつまらない話で時間を潰した楽しい思い出。

噴水で濡れた彼女をみて、彼氏が噴水の池に飛び込んでくれた笑える話。

パンを食べた後、彼女のコーヒーを一口飲む彼。

ラーメン屋を出た後、手を繋いでくれた彼。

嫌いなホラー映画を観た後、涙をする私をそっと抱きしめてくれた彼。

 

彼女の脳内にはピアノのメロディーが流れる。

ただトキメキを覚えながら、

愛を感じる話である。